先日、「IR実践セミナー」なるものに参加した。株式公開を計画している企業を対象に、IRの意味や具体的な方法について、多彩な分野の専門家がレクチャーしてくれるセミナーだ。昼食をはさんで1日8時間、3日間の講習は、かなりきついものだったが、当社の場合、すでにVIMEX市場に登録し、一定のIR活動をおこなっているため、理解しやすく参考になることが少なくなかった。


そこで、あらためて再認識させられたことがある。それは、いったん株式を公開してしまうと企業の経営者はもはや自由に発言をすることが許されない、ということだ。


「旅籠屋」という新しいスタイルの宿を1人でも多くの人に知ってほしい、そういう願いからこのホームページを開設し、同時に「旅籠屋日記」というコーナーもスタートさせた。もう4年近く前のことである。そして、1年前までは難しいことは何も考えず、気分次第で考えていること、感じていることを書いてきたのだが、今はそうもいかない。例えば、こんな人に会ったとか、こんな場所に行ったとか、こんな企業の人と話をしたなどということは、それがどんなに面白い話でもそのまま表に出すことができない。投資家の方々にとって、それが事業の動向を占う重要な情報になってしまうからだ。


ならば、仕事に関係のないことを書けばよいようなものだが、私の日常生活のほとんどが仕事を中心に回っていて、どこへ行っても、誰と話をしていても仕事と結び付けて考えてしまうから、仕事からまったく離れた日記なんて、逆に書く意欲が湧きにくいのだ。


IRの基本は、「隠さないこと」「うそをつかないこと」「タイムリーに語ること」なのだそうだ。自慢ではないが、「旅籠屋」について、私は何一つ隠し立てするようなことはないし、時に無邪気すぎるほど会社の状況をオープンにしてきた。ところが、ホームページでの情報発信は必ずしも全員の目に触れるわけではないから、ここだけで情報発信するというのはフェアでないということになるらしい。


私にとって「旅籠屋」は単にお金儲けの手段としてのビジネスではない。自分自身がこれまでの人生で感じてきたこと、好ましく思うこと、嫌いなこと、すなわち夢や理想を実現したいという気持ちがモチベーションの基本にある。とりわけ、ベンチャー企業にとって、経営者のこうした想いこそが企業の活力やビジョンの源泉のひとつになっているのは自然なことであり、その志が企業の存在価値を決める重要な鍵になるのだと思う。だからこそ、株主や投資家の方は経営者がどういう性格で、どういう感受性の持ち主かということに大きな関心を持つのだろう。


あー困った。感じたことをもっと自由に書きたいのに、それができない。つまらない。ほんとうは、公式発表される「結果」よりも、その「過程」こそワクワクするようなドラマがあるのに・・・って、こういう発言も控えたほうがよさそうだ。
鮮度は多少落ちるかもしれないが、「アンフェア」にならないように注意しながら、血の通った話しをしていこう。