かつてのようなブームは去ったが、4輪のF1はすでにマイナーな存在ではなくなっている。全戦中継を続けているフジテレビの功績だ。
いっぽう2輪の世界はどうだろう。イタリアの街頭で調査した「知っている日本人」の上位に原田哲也の名前があったそうだが、日本人の多くは「それって誰?ジャンプで失敗する人?」って言うかもしれない。日本で無名の彼がヨーロッパでは広く知られる人物であることに私はニヤリとしてしまった。片山と聞いて片山右京ではなく、片山敬済の名をあげるイギリス人もいるかもしれない。なんと言っても右京は「いつもビリを走っていた人だね」なのに対し、敬済は350ccクラスの世界チャンピオン(1977年)だった人なのだから。ちなみに原田哲也は16年後の1993年、250ccクラスの世界チャンピオンだ。
しかし、私はここで日本における2輪スポーツの認知度の低さを嘆こうというのではない。わかりにくいたとえだが、大企業を批判しながら町の議員と飲み歩くような工務店のオヤジは嫌いだ。大きいこと、有名なことに憧れるだけのムジナのミニチュアにはなりたくない。
きのう開幕したオリンピックを見ていて、競技種目の多さに驚く。初めて見るような競技もあり、「これじゃオリンピックも水脹れ、メダリストのステータスも低下する一方だ」という批判もあるだろう。しかし、種目が異なれば、競う体力も技術も違うわけで、人間の持つさまざまな能力や表現力に感動することができる。
4月5日の鈴鹿を皮切りに1998年のロードレース世界選手権がスタートする。そして今年はNHK−BSが全戦フル中継するのだそうだ。欧米並みのメジャーな存在になって欲しいという発想には抵抗があるが、2輪レース独特の素晴らしさに触れる機会が飛躍的に拡大するのは嬉しいことだ。信じられないようなスピードで斜面に飛び込んでいくスキーヤーに通じるような、神々しいオーラをたくさんの人に感じてほしいと思う。
それにつけてもNHKのスタッフがこうした感性や感動体験を持った人々であることを祈りたい。片山敬済の名前を聞いて心が震えないような人にレースを実況する資格はない。まさか8耐中継のあのアナウンサーを起用するつもりではないでしょうね。
4月5日、私はもちろん鈴鹿にいます。ほんとうは、あのオーラは電波には乗らないんです。



