12月に入ったと思ったら、今年もあと数日。ほんとうに師走の時の流れははやい。
今年も「月刊 ホテル旅館」(柴田書店発行)の1月号に寄稿させていただく機会をいただいた。その原稿を以下に転記します。


年頭所感 「2020年の展望と課題」  ラグビーから学んだこと


毎年同じ書き出しになりますが、日本にもアメリカのMOTELのような車旅行者が誰でも気軽に利用できる宿泊施設をと願い「ファミリーロッジ旅籠屋」を誕生させて25年、全国各地70ヶ所以上に直営店を展開するに至りました。春には4番目の高速道路内店舗も実現する予定です。日本初で唯一のMOTELチェーンとして、少しずつ実績を築いてこれたことはとても嬉しく誇らしいことです。
昨年の本欄で、「流れにもムードにも乗りません」と題して、そのユニークな特徴を紹介させていただきました。

  • 1.リピーターが60%以上。
  • 2.予約サイトへの依存率は15%未満。
  • 3.支払いはあえて現金のみ。
  • 4.出店は需要の小さなエリア中心。
  • 5.海外居住者がわずか1〜2%。
  • 6.人間性本位で支配人ペアを採用。
  • 7.収益や効率の最大化を追求しない。

これらは、創業時から掲げている「シンプルで自由な、旅と暮らしをサポートする」というモットーにしたがって歩んできた結果と言えます。


昨年の秋、ラグビーワールドカップが開催され日本中が熱狂しました。
日本代表の快進撃やゲームの面白さだけではなく、背後にある基本的精神に心動かされた面があったように思います。
清々しい風が吹き抜けた気分になりましたが、ラグビー憲章というものがあり「品位、情熱、結束、規律、尊重」という言葉がうたわれていることを知って納得しました。普遍性のある理念や哲学が明確に示され、試合以外の部分でも一貫して体現される、だからこそ多くの人に伝わったのでしょう。翻って当社の場合、創業前から掲げている理念は以下のようなものです。


●2つの事業目的。
 1.旅行者が、気軽に安心して泊まれる自由で経済的な宿泊施設の提供
 2.地域に調和する資産活用事業の創出と堅実で自立した生活基盤の確保
●4つのコンセプト
 1.素泊まり・・・宿泊特化の宿
 2.街道沿い・・・ドライブに便利な宿
 3.小規模運営・・・家族運営の宿
 4.チェーン展開・・・どこでも安心の宿
●4つのポリシー
 1.求められないサービスはしないのがサービスと割り切る。
 2.快適にお泊りいただくという基本は譲らない。
 3.あらゆる面でシンプルであることの合理性を追求する。
 4.周囲への調和と環境負荷の低減を図る。


これらは、創業前にアメリカを旅しながら感じたMOTELの本質と日本で展開することの社会的意義を考え抜いて導き出したことです。その後、数多くの困難があり、分かれ道があり、迷いもありましたが、根底にある強い願いと掲げた言葉により、ぶれずに進んでくることができたように思います。コンセプトやポリシーに一定の耐久性が、言い換えれば普遍性があったということだと自負しています。
しかし、事業を続けながら気づかされたこと、新たに考えなければならなくなったことはたくさんあります。


  • 車社会のインフラとして全国展開を進めれば需要の小さい地方への出店が増えてくる。また、建築費の高騰により土地活用の利回りが低下しており、出店が困難になる可能性がある。こうした収益性の問題をどう考えるか。
  • 店舗が増えるに伴い、質を標準化し、維持していくことが困難になる。また、多様な支配人社員に運営を委ねることによるリスクも高くなる。こうした人的な問題をどう解決していくのか。
  • 少子高齢化と車離れもあり国内のマイカー旅行は減少する見通しであり、不安定なインバウンド客に依存せず安定的に宿泊施設を維持継続していくことは可能か。
  • オーバーツーリズムの問題を含め、そもそも地域社会の維持と観光はどのように調和するべきか、「世界観光倫理憲章」で提起されている課題を含め何を指針とすべきなのか。
  • 残念ながら、日本では当社と同様の業態のMOTEL事業を担う会社が存在しない。切磋琢磨して事業を深化させ、広く社会に問題提起していくには同業他社の存在が欠かせないと思うが、その欠落をどう埋めていくのか
  • シンプルで自由な旅をサポートするMOTELのような宿泊施設は500年も1000年も続けていく価値と可能性があると考えるが、事業の承継や継続性をどのように実現していくのか。

  • ラグビーワールドカップを見ながら、あらためて普遍性のある理念や哲学とこれを共有し体現していくことの重要性を再認識しました。
    お気づきかもしれませんが、先に紹介した当社の理念は、切り口も次元もまちまちで断片の羅列という面を否定できません。
    創業から25周年を迎え、今一度深く考えて見直しを図り、「旅籠屋憲章」とでもいうべき言葉を明確に示さなければと考えているところです。