「桑名長島店」「寒河江店」と2週連続のオープン準備が無事終了し、きょうから決算監査が始まった。


第3四半期報告書 で公表したとおり、
・出店スピードのアップによる新規店舗(軌道に乗るまでは赤字になるケースが多い)の増加、
・店舗増に対応するためのスタッフ増員による本社経費の増加、
・昨年来の不況によるビジネス客を中心とする稼働率の低下、
などの要因により、今回の決算は残念ながら赤字を免れないのだが、悩ましいのは「ファイナンス・リース」の適用によって、会計上1千万円近くの費用が増えてしまうことだ。それも、単年度だけでなく、今後の新規店舗を含め毎年積みあがっていくのだから、経営上の影響はきわめて大きい。


当社の場合、初期の3店舗を除き、店舗の不動産は所有せず、借り上げて家賃を払いホテルの経営と運営を行っているわけだが、先例のない業態であることや会社の知名度を含め信用力が十分でないこともあって、賃貸借期間20年間を通じて家賃保証することで土地建物のオーナーのリスクを減らし、出店契約をまとめてきた。


こうしたことから、従来の「オペレーティング・リース取引」ではなく「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に区分されることになり、今回の決算から「リース取引に関する会計基準の運用方針」に従った会計処理を課せられることになったわけだ。
契約内容も毎月の家賃支払額も変わらないのに、会計処理の方法だけが変わることになる。


具体的に言うと、不動産を購入・取得していないにも関わらず、同等の金額をリース資産・リース債務に計上するため、貸借対照表の金額が一気に増えることになる。
また、リース債務は現在価値で割り引くため、実際の家賃支払額より小さくなるため、差額は支払利息として計上されることになる。
そして、この利息額の算定に利息法が適用されるため、少なくとも契約期間の半ば過ぎまでは定額法による場合よりも割高になる。
つまり、定額法で良ければ、従来の支払家賃≒(リース資産の)減価償却費+支払利息となり、損益上の差はほとんどないのだが、利息法適用となると、従来の支払家賃<(リース資産の)減価償却費+支払利息となり、損失が増大することが利益額に大きな影響を与えることになるのだ。


1店舗あたり、毎年100〜200万円も費用が増加すれば、出店すればするほど赤字が大きくなり、向こう10年くらいはどんなに頑張っても黒字復帰が難しくなる。とすれば、これは当社のようなビジネスモデルを会計制度が結果的に否定していることを意味する。


「ファイナンス・リース」に該当するかどうか。利息法の適用が必須かどうか。
専門書を精読し、監査法人と研究を重ね、公認会計士協会に何度も判断を仰いだが、結論が変わることはなかった。


たしかに、全額家賃保証の賃貸借契約は、ある種の「隠れ債務」を抱えていることであり、会社に万一のことがあった場合の解散価値が貸借対照表から読み取れないことになり、会計の透明性から言えば好ましいことではない。
また、リース債務が減っていくに従って利息の額が減っていくという考え方も至極当然のことと言える。


だが、そもそも会計基準とは一般的な合理性だけで、定めてよいものなのだろうか。
例えば営々として事業を営んでいるメーカー企業が時価会計の適用だけで、突然大きな損失計上が課せられ、経営破たんの危機にさらされる例が少なくないらしい。時価会計がほんとうに企業価値を正当に表すのかという疑問は、本家本元であるアメリカからも発せられ、運用基準が揺れているようだ。加えて、企業会計の継続性・連続性という観点から、運用基準の大きな変更は決して望ましいことではないはずだ。


「隠れ債務」というリスクを負っているというが、そもそもベンチャービジネスというのはそれなりの経営リスクを背負ってスタートするのであり、そのリスクを厳密に費用化すれば、いつまでたっても黒字化できない事業となる。投資家保護は大切だし、経営の透明性も重要だが、今までだって、リース取引の詳細は注記で示していたのだし、すべてをB/S、P/Lに反映しなければならないというのはいかがなものか。


だって、多くの人は赤字は赤字としか見ないし、金融機関の融資条件も株式市場の上場条件も会計基準の変更に配慮するとは期待できないからだ。


今回のことを契機に、今後の出店については家賃の保証期間を20年から15年に短縮させることにした。
監査法人との検討を経て、公認会計士協会にも確認したが、これだと「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に当たらないからだ。
たしかにオーナーのリスクは多少高くなり、出店交渉に影響が出るおそれもあるが、旅籠屋の実績や信用力も10年前とは違うだろう。誠実に説明して、理解していただくつもりだ。


それにしても、都市計画法といい、旅館業法といい、労働基準法といい、会計基準といい、どこへ行っても、旅籠屋のビジネスは「想定外」で苦労が絶えない。
やれやれ。