きのうは、久しぶりにひどく落ち込んだ。
仕事を終えた後、あえて自分を鼓舞しようといつものようにジムに行き、5km走って、その間は忘れられたが、夜中になると目が覚めて眠れなくなった。
というのも、楽しみにしていた新しい出店の話しが、最終段階になって暗礁に乗り上げてしまったからだ。


そもそもは先方から持ち込まれた「建て貸し」の話しで、現地を訪ね、条件面で譲歩し、質問にも誠実に答えたつもりなのだが、上層部からのゴーサインが出なかったらしい。考えてみたら、ちょっと失礼な話しではないか、とも思うのだが、景気低迷の中、経営者の判断も慎重にならざるを得ないのだろう。

思い返せば、業務提携先であるリサ・パートナーズさんの協力を得て比較的容易に出店数を増やせるようになったのはここ2、3年のこと。それ以前は、ひとつひとつの建て貸し案件を具体化するために、何度もオーナーへの説明を繰り返し、結局実を結ばないケースも少なくなかった。

くやしい、情けない、今回、そんな苦い思いを久しぶりに味わった。


1号店オープンから15年が過ぎた。店舗も30に増えた。高速道路内の宿泊施設という画期的な出店も実現した。
相変わらず、儲かるビジネスにはなっていないが、それは創業の理念を重視し続けていることの結果でもあり、社会的使命を実直に果たそうとしている証しであるとの自負もある。
つまり、数年前より、ずっと実績も積み、信用力も上がっているはずなのだが、それでも相変わらず「信頼してもらえない」とすれば、なんとなく虚しくなる。悲しくなって思わずため息が出る。


新規出店に関して、当社は一時的なキャピタルゲインを得ているわけではない。オープン後、長期間にわたってコツコツと宿泊営業を続けていく積み重ねがすべての利益の源泉である。だから、新規出店を続けなければ、経営が成り立たないというような自転車操業とはまったく無縁である。というより、出店ペースの上昇は当面の赤字店舗を増やす面があるから、損益上は出店を抑制するほうがプラスだったりする。


だから、今回のことも損得の面で嘆いているのではない。


しかし、旅籠屋のオープンを支え、それを生業の柱にしている実直な取引先がいくつもある。そして、支配人になる日を待ちながら全国を飛び回っている「代行支配人」の夫婦が何組もいる。こうした人たちにとって、コンスタントな新規出店の継続は死活問題である。


彼らの期待と望みに応えたい。それが、私の一番の願いであり、ため息の理由でもある。
それを「なにわ節」と批判するなら甘んじて受けよう。アマチュア経営と揶揄するなら、そのとおりと答えよう。


「経営者は心の中に鬼を一匹飼っておけ」という言葉があるが、情に流されない厳しさを持つという意味では納得するが、会社の利益のためなら周囲の犠牲を省みないということなら断じてそれは私の流儀ではない。


旅籠屋に関わる人間がハッピーになれないなら、いったい何のためのビジネスか。



暗礁に乗り上げてしまった今回の出店用地。 おそらく、他には有効活用が難しい土地だと思う。 しかし、旅籠屋にとってはとても面白い立地だと感じている。
海水浴を楽しむ子供たちの笑い声、近くの事業所を訪れる馴染みのビジネスマン、のんびりと周辺を散策する年配のご夫婦。
地域を照らす小さな灯火となる宿。社内のみんながそんな光景を思い描き楽しみにしていた旅籠屋。

ちょっとした波の一押しで船が暗礁を越え、再び進み始めることを願って止みません。